多くの高齢の方が「自宅で最期を迎えたい」と願っています。しかし、本当にその希望を叶えるには、医療・介護・ご家族の支えが必要です。今回ご紹介する論文では、そのための実践的なフレームワークが示されており、紹介させていただきます。
論文情報
タイトル:Our Patients Want to Die at Home. Are They Prepared for It?
著者:Inbal Mayan/Ron Sabar/Alexander K Smith/Lauren J Hunt
雑誌:Journal of the American Geriatrics Society 発行日:2025年5月27日 DOI:10.1111/jgs.19549
背景と目的
高齢者にとって「自宅で最期を迎える」ことはとても自然な願いです。しかしその裏には、必要なケア体制や支援が整っていないケースも多数。本論文は、臨床現場で医師やケアチームが取り組むべき「4つのフレームワーク」を提案し、患者や家族の希望をしっかり支えるための方法をわかりやすく整理しています。
4つのステップ
1 希望の確認と包括的アセスメント
– 患者・ご家族の希望を丁寧にヒアリングし、必要な医療・介護・社会資源を評価する。
2 チーム医療体制の構築
– 医師、看護師、ケアマネ、訪問スタッフ、リハビリ、地域資源など、多職種の連携体制を整える。
3 ケア計画の作成
– 痛み・息苦しさなどの症状緩和はもちろん、家族支援や緊急対応方法なども具体的にプランを作成する。
4 継続的な見直し
– 状況や希望は日々変わります。定期的に状態評価を行い、ケア計画は臨機応変に修正していくことが重要。
実践のためのポイント
意思疎通は早めに:症状が安定しているうちに、家族全員で希望を共有し、文書化まで進める。
ご家族の心と体の支援:介護負担や心身の疲労にも配慮し、代わり手の確保やショートステイの相談。
地域資源を活用:訪問看護やホスピス、地域包括支援センターなどのネットワークを最大限利用する工夫を行う。
緊急時の備え:夜間や休日の対応窓口、緊急連絡先、24時間対応可能な体制があるか確認しておきましょう。
このフレームワークに基づいた準備があれば、自宅で「その人らしい」最期を迎える可能性が高まります。もし、大切なご家族やご自身のために少しでも気になる項目があれば、ぜひ早めに専門家とご相談ください。
とくに、支援を受けなければなかなか自宅でのケアを継続していくことは難しいと、いろいろな現場をみて実感しております。そのためには、やはり早めの相談が大切で、ケアをしてくれる専門にゆだねる部分、家族で大切にしたい部分、そういったことを、実際にケアを受けながら進めていくのがよいと感じます。
翻って、小さな診療所の医師としては、地域でいろいろな形で訪問診療に関わる人たちと、日ごろから連携を取って
置くことが、大切であると改めて実感しました。医師だけでも、看護師だけでも、ケアマネージャーだけでも、
単独では、患者さんの希望を叶えることが難しい。患者さんファーストで取り組むためにも、日々の診療のなかで
お互いに言い合える関係性を作っていくよう、心がけたいと思います。