先日、クリニックに、咳が6週間ほどつづくということで受診されたケースがあった。近医で治療をうけていたが改善しないため、なんとかしてほしい!というプレッシャーのもとでの診療でしたが、その方が「全然この薬が効かない!」といって見せてくれたのがゲーファピキサント(Gefapixant:商品名 リフヌア)で、はずかしながら、全然この薬のことを知らなかったので、「これはいったい何だろう!?」と悩んだことを思い出す。
そんな中、自分の中でタイムリーにJAMAにシステマティックレビュー・メタアナリシスがあったので簡単に振り返りたい。この論文では9つのRCT、合計2980名分の患者データを解析している。結果の要約は次の通り。
咳の頻度 | 17.6%[95%CI, 10.6% – 24.0%]の減少 |
咳の重症度(100㎜スケール) | 6.2㎜[4.1 – 8.4]の減少 |
咳関連のQOLについて | 1点[0.7 – 1.4]の改善 |
Gefapixant 45mg 1日2回内服での効果
とりあえず改善はあったが、問題はその程度かと思われ、17%前後の改善で効果があったと思うか?外来で効果がある薬として使用するか?という点だと思われますが、重症度の改善も微々たるものであり、効果を期待して出せるような薬ではないのかなぁという印象です。なお、副作用(味覚変化など)が増えることも確認されており、使用する場合は十分な説明がなされて合意を得てからのものになるだろう。
この論文の結語では、効果は少ないなりにもあるので、その他の方策がない場合に考慮というような言い回しになっています。長期の原因不明の咳嗽では、鑑別を十分に行って、原因同定に努めるほうが、安易にこういった薬剤に手を出すようりはいいだろうと考えます。冒頭のケースも、結局はベースに気管支喘息があると考えられる病歴であり、今回の研究論文の対象患者とは違う形になりますが、吸入薬を使用したところ、すっきりと改善されました。もちろん、時期的に治ったということも否定はできませんが、鑑別の重要性が身に染みる日常診療でした。
参考文献
Efficacy and tolerability of Gefapixant for treatment of refractory or unexplained chronic cough: A systematic review and dose-response meta-analysis. JAMA. 2023;330(14):1359-1369