骨折の予防はできるのか?閉経後の女性での研究

 久しく、お役立ち情報をアップできておりませんでした。楽しみにしている方もそれほどいない!?とは
思いますが、ご容赦ください。なかなかこれぞ!!という研究報告に出くわすことがなく・・・・。

 とまぁ、言い訳はここまでにして、今回は閉経後の女性における骨折、具体的には脊椎(いわゆる背骨)の
骨折予防に関する、これは理にも適っているという研究報告がありましたので、みなさんと共有します。

 題名は「Fracture Prevention with Infrequent Zoledronate in Women 50 to 60 Years of Age」であり、New England
Journal of Medicine に2025年1月掲載されたものになります。つまり、Zoledronate(ゾレドロネート:ゾレドロン酸
点滴静注液という商品名で日本では流通)という薬剤を頻回投与せずに骨折予防ができるか?ということを
調査したものになります。

 どのような点でこれまでのいわゆる骨粗しょう症の治療と違う点があるのか?ということですが、それも
この論文には掲載されており、以下の点になります。

1 薬剤を投与する患者は50-60歳という閉経後間もない女性で、骨塩量では骨粗しょう症には至っていないこと
2 ゾレドロネートは基本的には1年に1回投与となっておりますが、この研究では10年で1回 ないし2回 という
投与方法での予防効果を検討

 1に関しては、骨塩量は女性の場合閉経後は徐々に低下することが知られていること、骨折発生と骨塩低下は密接に
関連していることから、それなら早めに予防的投与をすることで、その後の骨折を減らせるのでは?という発想ですね

 2に関しては、毎年となるとしんどいし、コストもかかる。それなら未病の段階でもあり、投与回数を減らすことで
予防につなげることはできないのか?という視点なのかもしれません。

 骨折の評価はレントゲンで行っており、主たる考察は変形を伴う脊椎の骨折に関して評価しております。
 介入としては、ゾレドロネートを初回と次の5年後にプラセボを行う群と、ゾレドロネートを初回と5年後に行う群の2軍があり、比較対象はプラセボを2回投与する群となります。

 実際の結果はどうであったか?
 対象患者は研究が目標としていた1054名であり、10年間フォローを達成した患者は1003名と素晴らしい状態です。
10年間もかかるので、普通はもっと脱落してしまうことがありますが、この数は素晴らしいフォローアップ率です。
 平均年齢は研究開始時56歳、ほとんどがヨーロッパ系ということであり、アジア系には直接反映はできないかもしれないという要素が含まれます。

 

棒グラフは横軸に骨折女性の%を示したもので、見て明らかなようにゾレドロネート単回でも、2回でも有意に椎体骨折の発生が抑制されていることがわかります。

簡単に計算しても、約20人の閉経女性をこのゾレドロネートで1回であれ2回であれ治療した場合、10年後の骨折を1人減らすことができることがこの研究でわかりました。

今後の骨粗しょう症は、なってから治療ではなく、未病の段階で予防投薬することで骨折を予防する というような考え方にシフトいくかもしれない、そんな驚異的な数字であると思います。そのうえで、今後の課題としては、どのようなインターバルで何回程度の治療が必要なのか?ということになるだろうと言えます。今回の研究では2回と1回の差は出ませんでしたが、15年フォローなどではまたあらたな結果が出されてくるだろうと思いますので、注目しておきたいですね。

ただし、現在の日本では、このような治療方法は保険適応にはなっておりませんので、あらかじめご了承ください。

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